人と会話をしているとき、脳内ではコミュニケーションに関係する様々な領域が活性化します。
前頭前野(目の上の部分から額のあたりに位置する前頭葉の一部)は、相手の意図を推測し、気持ちを想像するなど、相手を思いやる働きを担っており、それが「共感」や「共鳴」という感覚の土台となっているようです。
会話中に話し手と聞き手の脳活動に「揺らぎ」を伴うリズムが生まれ、徐々に同調していくことを「脳の同期」現象といいます。その現象には、対面では「言葉」以外の「非言語情報」にあるようです。(まるで「認知能力」と「非認知能力」みたいです。)

会話で相手に与える影響は、「言語情報(話の内容)」が7%、「聴覚情報(声のトーンや口調)」が38%、「視覚情報(見た目や表情、しぐさ)」が55%を占めるとされています。
この数字からもわかるように、会話において重要な役割を果たしているのが、目線や表情、身振り手振りといった視覚情報です。視覚情報の中でも「目を合わせる」ことがポイント!これは、話し手側も聞き手側にも同じような脳の反応があることがわかっています。
このおしゃべりが脳を同期させて、脳を賦活させ、さらには満足感につながります。

コロナ禍から、オンラインでの会議や面会が多くなりました。このオンラインでの会話の場合と対面での会話の場合の脳活動の比較研究があります。
その結果は、オンラインでの会話は対面の会話に比べると、前頭前野の「脳の同期」が著しく低下することが明らかになったようです。オンラインでの会話では、一人で「ボーっと休憩している状態」と変わらない程度にしか脳の反応が計測されなかったそうです。
オンラインでは、なんとなく議論が深まらない、脳が働いていない感じがするのは、視線が合わないことが要因のようです。画像上で相手の人と目を合わすためには、カメラに視線を向けなければなりません。でも実際は、画面に映っている人の画像を見ています。発言をしている人がいればその画面に視線を持っていくので視線が外れた状態に映ってしまうのです。高齢者なんかもっとわからないですよね。写真を見る感じで面会した実感はないように思います。

ITが進歩しても人の脳は対面面会での会話に勝るものはないようです。家族の励ましの影響ってすごく大きいのですが、コロナが増えてきて、再び病院・施設の面会が減っている印象です。正直リハビリ効果もなかなか伸びません。脳の賦活が図れるアイテムが欲しいです。(この部分のIT業界に期待して、限りなく対面に近いリアルな状況が再現されるように頑張ってもらいたいです)