(写真:我が家のナースの娘たち)
私は子供の頃、明治生まれの祖母に育ててもらいました。
祖母は竹を割ったような、しゃきっとした性格で、子供の頃の私が言われたことをすぐにしないで、ぐずぐずしていると、「言われたことはすぐにする。明日のことは今日しなさい!」「人を待たすより、自分が待ちなさい。」と言われ、針仕事、炊事と女の子として覚えておくことも仕込まれました。
でも、祖母は厳しいだけでなく、心の温かい優しい人でもありました。
我が家は裕福ではなかったのに、困っている人を見るとほっとけなくて、薪で五右衛門風呂を焚くと、近所の人に「お風呂沸いたよ」と声をかけ、橋の下で生活しているホームレスの人には「あの人も好きであそこで生活している訳ではない。」と言い、おにぎりを作って持って行きました。
おせっかいですが、涙もろくて、温かい人でした。いつも子や孫、友人の家族のことまで気にかけていました。そんな祖母なので、毎日朝早くから日暮れまで、ひっきりなしに友人が来ていました。別れた息子の嫁まで、ずっと祖母には会いに来ていました。
そんな祖母が私は大好きで、大人になったら、祖母と一緒に住める綺麗な家がほしいなぁと思って、Wワークしながら、頑張って貯金もしました。
でも、私の思いは叶わず、私が23才で家を買う少し前に、祖母は遠くへ旅立ってしまいました。私は祖母に何も恩返しができていません。
恩返しする前に逝ってしまったのです。
普段仕事をしていると、周りの人に助けてもらったり、励ましてもらったりすることがあると思います。いつか恩返しできたら・・・と思っていても、なかなか恩返しができませんね。私は大好きな祖母にも、恩返しができていません。
自分が受けた恩をその人にお返しできない・・・
でも、その恩を別の誰かに送ることはできます。
そして、恩を受けた人がまた別の誰かに送る。素敵な連鎖です。
その輪が続いていくと、とても優しい人の輪ができていくと思います。恩を受けた相手に返す恩返しではなく、恩を別の誰かに送る恩送り。
恩送りが恩返しになる。
私は育ててもらった祖母への恩返しができなかったけど、自分がしてもらったことを子供に送り、祖母の優しい思いがずっと続いていくことが、嬉しい恩送りではないかと思っています。