「とうとう…」
令和4年3月7日(月)「Nさん(短期入所利用者)ですが病院受診時の検査で陽性が出ました。」お昼過ぎに退院前カンファレンスからの帰りに受けた電話が新型コロナウイルス感染症と関わるスタートでした。
いずれは自施設でその日が来るとは思っていましたが、いざ災害を目の前にするとしばらくの間現実を受け入れることが難しいこともあります。頭の中を整理してから保健所に連絡しました。施設内の消毒、ゾーニング(ゾーニングとは、汚染ゾーンと清潔ゾーンを区分けすることです。)職員さんと利用者さんの抗原検査、関係機関への連絡など必死で行いました。
検査の結果ですが、短期入所8名、通所利用3名、職員7名が陽性でした。慢性閉塞性肺疾患、肺癌手術後片肺切除、糖尿病、100歳超え、利用者さんはそれぞれ疾患や加齢のリスクが有る方々でしたので、内心「アカン、何人かは危ないわ。」と思いました。3名の方が入院となりましたが、状態は落ち着いているということで全員が数日のうちに施設に返されることになりました。当然、「今、施設で療養されているコロナ陽性者を介護するだけでも大変なのに、受け入れ出来る訳ないでしょう。」と病院と保健所に対して猛抗議しましたが、当然叶うことなくコロナ陽性者9名を施設で介護する日々となりました。短期入所で夜勤している職員3名が10日間の自宅待機となり、私自身も夜勤に入りました。
コロナ陽性患者の中でずっと一緒に過ごすことで、いつ自分がコロナに感染するかわからない恐怖もありましたが、とにかくみんなを守らなくてはいけない。利用者さん、職員さん、家族の生活を守らなくてはならない。残った職員さんと共にがむしゃらに働きました。被災現場のリーダーとして上手くマネジメントしなくてはと頭ではわかっていても至る所で職員間での口論が勃発しました。ようやく落ち着くかと思われた9日目から同一敷地内の入所施設でも陽性者が出たため(こちらは入所者1名、介護職員4名、ケアマネジャー1名の計6名ですが、隣の施設との感染に関して関連性が認められない、また職員間の接触も認められないと保健所に判断され、クラスター認定はされませんでした。)最終的な解除は4月3日(日)でした。
物資の備蓄ですが、マスク・手袋・ガウン・アルコールは十分に備えていると認識していました。全く足らなかったのが、N95の医療用マスクとフェイスシールド・アルコールの自動噴霧器。そして感染症に対する認識。結果なにも備えていないに等しい状況でした。
「混乱の中、感じたこと」
大きな苦難が来たものだと正直嘆きました。苦難の門には誰も進んで入りたくないものです。しかし苦難がやってくるのは自分自身の振る舞いの不自然さやわがままがもたらすもの。事業所運営に関して真剣に見ていないところがあったことへの反省。職員さんと認識の共有が出来ていなかった。大切なことを真剣に伝えることに懈怠があったからクラスターを引き起こしてしまったこと。この苦難の中で学んだことは、物事を正しく見てそのまま受け入れ苦難と関わることが大切で、苦難から逃げるのではなく苦難の中で解決を図ることでないと前には進まない。失敗から学ぶことは多々あり、その失敗をどう生かすかが大切です。
そして、この原稿を書いている日に新規感染者が出てしまいました。ここからは、皆さんが朗らかな心でおおらかな健康を身いっぱいに受けて日々過ごせる環境づくりに努めるのみです。