認知症ってなんだろうと興味を持ち、様々な研修会に足を運ぶようになり、また講師として話をさせていただくようにもなりました。しかし、最近学びを深めることにより、さらに「認知症ってなんだろう」と考えるようになっています。

 現在、日本の認知症罹患者数は、「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計で、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者といわれています。また、認知症に効果のある特効薬はないと言われています。

 認知症の定義を再度、読み直してみると、「脳のある部分に生じた病変によって自分のあたり前の暮らしが困難になるほどわかる力・できる力(認知)が低下した状態のことをいう」とあります。
認知症は脳の病気という人もいますが、定義からみると正しくは、脳の病気になったうえで、自分の当たり前の暮らしが困難になった状態(症状)をいいます。
 ということは、脳の病気により記憶障がい、見当識障がい等の中核症状は出現するが、「目の前のその人」の当たり前の暮らしを維持することができれば、その人は「認知症じゃない」ということになります。

 「目の前のその人」の当たり前を支持するためには、その人の素質や性格等をしっかりと知ること、そして、その人が安心できる環境、心地良い環境を整えることができれば、その人を認知症という診断から解放することができるのではないか、と考えます。

 「認知症」のもつイメージは、世間一般的に負のイメージ、ネガティブなイメージをもっている方が多くいると思いますし、認知症になると全てわからなくなる、何もわからなくなると思っている一般の方もいます。福祉従事者の中にもそういった考えの方がまだまだ多くいるのではないでしょうか。
 そのようなネガティブなイメージがあるなか、早期受診を勧められています。自分に置き換えると、ひょっとすると認知症と診断されるかもしれないと怖くなり、受診を拒否するかもしれません。早期受診、早期対応を勧めていくためには、いまもっているイメージの払拭が必要になります。

 賛否あると思いますが、私は「認知症は長生きの勲章」だと考えています。
 誰しもなる可能性があると考え、自分がなったときに、自分のことを理解し、安心できる環境があれば、自分らしく生活していくことができるのではないでしょうか。
 また、認知症と診断をされた方に適切に対応できるということは、認知症と診断されていない人に対しても適切に対応することができると思います。

 「認知症にやさしい社会は、誰にとってもやさしい社会」。
 そんな香川県にしていきたいですよね。

 認知症の方は、日々サインを送って心理的ニーズの充足を求めています。我々福祉従事者は、自分では気づかないうちに相手の心理を都合よく理解したつもりになり、管理し、感覚麻痺に陥っている可能性があります。いま一度、自分の関わりを見つめ直す必要があるのではないでしょうか。まずは、認知症という症状を適切に理解し、そして目の前にいる人の心情に寄り添っていくように努力していきましょう。

 その第一歩として、皆様にお願いですが、専門職である我々福祉従事者が適切な言葉遣い、例えば、認知症を認知と省略している方がいれば、全く意味が違うことを理解し、適切な言葉を浸透させていけるようにする。そういった啓発から認知症の適切な理解を求めていただければと思います。